福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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外国人労働者受け入れと共生社会

『部落解放』2019年1月号

 

 国会で、入管法改正法案が議論されている。「特定技能一号」と「特定技能二号」という在留資格を新たにつくり、限られた業種に関して外国人に労働を認めるものである。技能実習生から特定技能一号に移行する場合は、試験を免除される。技能実習生が働ける期間は三年から五年であり、特定技能一号は五年まで働くことができる。ぜんぶ合わせると一〇年になる。
 技能実習制度は、発展途上国に対する技能移転のためとされてきた。技能実習生の多くは、来日する前に多額の借金をしているが、光熱費、住居費などの名目で給料を天引きされ、借金がなかなか減らず、また、職場移転ができないために、低賃金や長時間労働など極端に劣悪な労働条件でも耐えて働くということになる。多くの技能実習生の話を聞いてきた。基本給が一万五〇〇〇円、残業代は時給三〇〇円で、朝早くから夜は一二時近くまで縫製工場で働いたという女性の話を聞いた。厚生労働省が調査に入った事業場で、労働基準法違反は七割から八割あるとされる。どれだけ法律が無視されているか。福島県で、除染の作業に知らないで従事させられたというベトナムの青年もいる。失踪したり、逃げ出す技能実習生も多い。
 安い労働力を手に入れたいけれど、いわゆる単純労働に関しては、原則として在留資格が認められないので、「発展途上国に対する技能移転」を建前に、安い労働力として技能実習生を利用してきた。建前と本音のすさまじい乖離。問題がありすぎるこの「現代の奴隷制」の上に「特定技能一号」をつくろうとしている。  「いったいいつ技能移転をするのか」と質問すると、法務省は、特定技能一号で五年間働いたあとでもいいと言う。技能実習生は技能の移転のための制度という建前が、かなぐり捨てられたと言ってよい。これほど問題のある技能実習制度は廃止して、共生社会の受け皿をきちんとつくりながら、どのような在留資格を設けるべきか、とことん議論を尽くすべきだ。
 政府は、今回の入管法改正案について、移民を認めるものではないと言う。しかし、移民とは、本国を一年以上離れて住んでいる人というのが国連などの定義である。だれが考えても移民である。
 政府は、労働力が足りないところに外国人を安価な労働力として入れようとしているのである。しかし、労働力だけとろうとしても、それは不可能である。やってくるのは人間である。人を人と見ない政治は、必ず将来に禍根を残す。  政府は、特定技能一号の人には家族の帯同を認めないと言う。しかし、人は恋愛し、結婚し、妊娠し、出産したりする。人間である以上、それは止められない。集会でこんなことを聞いた。技能実習生のベトナムの女性が妊娠したら、事業主から「堕ろすか、帰国しろ」と言われたそうである。妊娠することも出産することもできないとは、どういう境遇だろうか。労働力だけピックアップして使おうとすることなどできない。医療、教育、介護、労災、住居など、すべての受け皿が必要である。さまざまな受け皿をつくることなしに共生社会はありえない。
 政府は、五年後の外国人労働者受け入れ見込み数を三四万人と発表した。五年、一〇年後に一〇〇万人を超すということはないだろうか。移民ではなく、移民政策はとらないとなると、これまた、現実と建前の間にすさまじい矛盾が生じる。人間であるのに権利が認められないといったことは大問題だ。社会がさらに階層社会となり、分断と排除が起こるのではないか。
 また、日本人の労働条件も実は下がっていくのではないか。外国人労働者は、港湾、建設、介護、農業などで働くことになるのではないかといわれている。みんなの努力で少しずつ、少しずつ労働条件を改善しようとしてきたところに、今回の法改正は水をバサーとかけることにならないか。人手不足のところに大量の外国人労働者がやってくるのだから、労働条件をよくしようということにならなくなる。劣悪な労働条件は温存される。共生社会をつくるという覚悟なしに、安価な労働力として外国人労働者を入れてはいけない。まずは、技能実習制度を廃止すべきである。そして私たちは、もうすでに移民の人たちがいるこの社会を、少しでも共生社会にするべく努力していこうではないか。




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