福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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水道の民営化

『部落解放』2019年2月号

 

 水道の蛇口をひねれば、安心・安全な水を飲むことができる。ほんとうにすばらしいことである。
 一二月一〇日に閉会になった臨時国会で成立した法案は、入管法改正法案と水道法改正法案である。水道法の改正法は、水道基盤の整備というよい点も含まれているが、最大の問題は民営化である。自治体は水道の所有権をもつが、運営権を売却できるというものである。たとえば二五年契約で売却すると、その間、水道料金はすべてその民間業者が受け取ることになる。
 水は、一〇〇年単位で資源の管理やメンテナンスを行うものである。利潤を上げるべき民間企業が運営権をもち、はたして長期的展望で水道を守ろうとするだろうか。民間企業になれば、株主配当をし、役員報酬を支払い、利潤を上げなければならない。
 世界では、とりわけヨーロッパでは、水道の再公営化が進んでいる。二八〇以上といわれる都市がすでに再公営化している。「最後の一滴まで」というドキュメンタリー映画がある。パリやベルリンにおける水道民営化の問題を扱っている。水道料金の高騰や水質の汚濁など、さまざまな問題が起き、パリは二〇一〇年に、ベルリンは二〇一四年に再公営化した。ベルリンは、再公営化をするにあたって一六〇〇億円以上のお金を水メジャーの多国籍企業に支払わなければならなかった。
 イギリスにも再公営化の動きがある。イギリスの会計検査院は昨年一月、PFI(民間資金を活用した社会資本整備)はコスト高になると、こっぴどく批判した。そしてイギリス政府は、今後PFIはいっさいやらないと決めた。イギリスはサッチャー政権のときに民営化を強力に推し進めた国である。そのイギリスにおいて民営化、PFIが、割高になり、運営が不透明になり、チェックができなくなるという問題をかかえ、根本的に批判され、大転換したのである。
 水道の民営化が世界で多くの問題を生んだにもかかわらず、なぜ日本で一〇周遅れのトップランナーをやろうとするのか。ヴェオリア、スエズなどといった世界の水メジャー多国籍企業が、ヨーロッパからアジアへ、日本へシフトしているのである。情報開示をしないと批判された水メジャーが、はたして日本で情報を開示するだろうか。
 被災地の現場に行くと、水の重要性を痛感する。災害のときは自治体が責任を負うので大丈夫だ、という答弁が国会であった。浜松市の水道の契約書では、不測の事態のときは自治体が責任を負うとしている。
 災害のときに水道管が破裂したり傷んだりしたときに、民間会社は責任を負わないのか。水道管の破裂や破損は、ふだんからの補修が悪かったために起きたものかもしれないのである。
 災害のときにはどうなるのか。被災地の現場に行くと、頼りになるのは技術をもった公務員である。北海道胆振地震のときも、新潟県からやってきた、地震で倒壊した家屋などの判定ができる公務員の人たちがありがたい、と現地で声を聞いた。二〇一一年三月一一日の東日本大震災のときに、福島県では水道の公務員のOB・OGたちが大活躍したと聞いた。たとえば、地表から音を聞いて地中の様子がわかるノウハウをもっているのである。福島県、宮城県、岩手県には、全国から水道の現場で働く公務員が駆けつけた。そして、熊本地震のときには、「恩返し」として福島県、宮城県、岩手県で働く水道の労働者が熊本に駆けつけたのである。岩手県からは、重い重機を船で運び、熊本まで行ったという。
 残念ながら、日本はさまざまな災害が多い。そのときには全国からの応援が必要である。水道は自治事務だが、ひとつの自治体でやれるわけではない。国会でも議論になったが、営利目的の民間会社が被災地に何人も長期の応援に出せるのか。
 国会の審議のなかで、世界最大の水メジャーのひとつ、ヴェオリア社でPPP(官民連携)を担当する社員が、内閣府のPPP・PFI担当室に出向し、まさにこの水道民営化を担当し、夏に成立したPFI推進法案の審議では、参議院内閣委員会で大臣の後ろに控えていたのである。
 水道法改正やPFI推進法で利潤を受ける企業の人間が、政策立案にかかわっているのは大問題ではないか。
 そして私たちは、公共サービスとしてやらなければならないことがあるということも、共有しなければならないのではないか。水道を民営化するには、自治体の議会の同意が必要である。まさに自治体が大事である。大いに議論していこうではないか。




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