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◆ ぬくもりのある社会を目指して
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〈『部落解放』2012年1月号掲載〉
福永宅司
人は、一人で生まれてきて、一人でこの世を去ります。考えてみたら実にさみしいものです。生まれてきた赤ちゃんがあんなに泣くのは、この世に生まれてきたことが不安で不安でしょうがないのかもしれません。
人がもし、一人で生まれてきて一人で去っていくさみしい存在ならば、せめてこの世で生きている間は、ぬくもりのある人間関係の中で過ごしていきたいと切に願います。
人間は、「人」の「間」と書きますから、この間の絆を大切につなげていければと思います。
二〇一一年三月一一日、東日本大震災のニュースを見て、連日涙したものでした。声をあげて泣きました。
春は、花見客も激減しました。自粛というよりは、多くの悲しみを見ていれば、歌ってさわぐ気にはなれなかったのでしょう。
宮沢賢治も東北の人です。彼は、「世界の全体の人が幸福でない限り個人の幸福はありえない」と言っていました。花見客が激減したのは、この心情に近いものが人々にあったからではないでしょうか。
被災地に、映画「男はつらいよ」の寅さんが訪問したらどうするのでしょう。きっと寅さんは、泣いている人の話を最後まで聞いてくれて、「つらかったねぇ」と涙してくれることでしょう。
「がんばれ」とは言わないで、ただ横に座って泣いてくれるのかもしれません。「もうこれ以上何をがんばればいいんだ」という人にがんばれとは言えません。
時には、「かわってやることはできないけれど。横にいてただいっしょに泣くことしかできないけど」、そういう寄り添いかたもあるのです。
坂本九さんが生きていたら、真っ先に被災地にかけつけ「上を向いて歩こう」を歌ってくれていたかもしれませんね。上を向けば空があり、太陽があり、星がありますから。そういえば「見上げてごらん夜の星を」も九ちゃんの歌でした。
私は、小学校の元教師です。そして、今、子どもたちをはじめ、いろいろな人に人権啓発をテーマにした「一人芝居」を演じています。だから今でも、子どもたちの教育にはこだわっています。
子どもたちは、リアルタイムで、大人をはじめいろいろな人が被災地の支援をしている姿を目の当たりにしています。弱い立場の人を決して見捨ててはいけない、排除してはいけないことを学んでいます。
学校教育の中で、一人も見捨てないという教育の大切さを今こそ子どもたちと語り合ってほしいものだと思っています。 話は変わりますが、二〇一一年の夏、私は飲酒運転撲滅の一人芝居を創りました。私の住む福岡県は飲酒運転の事故が多く、全国のワーストワン、ツーの常連という不名誉な位置にいます。
二〇一一年の二月、高校生二人の尊い命が飲酒運転で奪われました。 「もうじっとしていられない」と、彼らの人生を演じながら、飲酒運転撲滅を訴えています。
この取り組みで、じつは加害者側も、再犯やアルコール依存症という問題を抱えている人が多いということもわかってきました。酒を飲んで運転するのは絶対に悪い。犯罪です。許されません。ただそれとともに、「酒の力を借りないと生きていけない」と追い込まれている人がいること、そういう人を支えていく社会をつくっていくことも大切ですね。
これもみんなの応援が必要なんです。差別を無くしていくのもみんなの力が必要なんです。
「世間はみんながつくるものです。差別をしていては誰も幸せになれない」とみんなが言える世間をつくることがたいせつですね。
今回は震災をテーマに、一人も見捨てない社会づくり、ぬくもりのある社会づくりについて述べました。これからも自分なりにできる応援を考えていきます。
(ふくなが・たくじ/子どもの学び館代表、一人芝居演者)
福永宅司 一人芝居先生が行く http://members.jcom.home.ne.jp/fukunaga-family/
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