コラム・水平線

月刊誌『部落解放』の巻頭コラム「水平線」を著者のご了解を得て、転載いたします。

(2018/6/15up)




◆ 「等価性の連鎖」の追求が新しい運動の萌芽となる ◆

〈『部落解放』2018年6月号掲載〉

藤田孝典

 貧困問題に一五年ほど関わってきたが、取り組みのなかで見えてきた問題を、「現場発」という形で社会に発信し続けることが重要だと思っている。「貧困問題は、当事者個人の問題ではなく社会構造の問題であり、社会的手当てが必要だ」ということを、多くの人に理解してもらわなければこの問題は解決しない。
 問題を発信する側も、「現場のソーシャルワーカーとしての視点」=「ミクロ的視点」と、状況を俯瞰し問題を構造的に捉える「研究者の視点」=「マクロ的視点」を持ち合わせていることが重要だ。ミクロ的な視点で現場の運動に取り組みながら、一方でマクロ的視点から政策を提言していく。こうした、「ミクロとマクロの連動」が深化することによって、状況は改善していくはずである。
 二〇〇八年に「反貧困ネットワーク埼玉」を立ち上げ、貧困問題に取り組んできたが、これもミクロな現場から積み上げてきたネットワークである。たとえば、「借金がある」「低賃金で生活が苦しい」といった個別課題を、一つひとつ解決するなかで出会った仲間たちが、ネットワークの軸となっている。そこには、弁護士や税理士、地方議員、メディア関係者、大学研究者など多職種の専門家も加わっていて、それぞれの特性を生かして役割を担っている。最近では、マクロ的な視点として「ソーシャルアクション(社会を変える運動)」への取り組みも徐々に強化している。たとえば、弁護士や学識経験者のサポートのもとに行政への要望書などをまとめたり、メディア関係者の協力のもとに記者会見を開いたり声明を発表するなど、いろいろな人たちと連携するなかで経験を積み重ねてきた。こうした蓄積のおかげで、今では政府等が法律を立案する際に、私たちの意見を聞いてくれる機会も増えてきた。
 今後は、貧困問題への取り組みだけでなく、被差別マイノリティをはじめとした広範な市民との連携を模索していきたい。そのときに重要になるのが、「等価性の連鎖」、すなわち「同じような価値を持つ人たち同士の有機的なつながり」だ。これは、「平和で差別されることなく暮らしたいと思っている人たち」とつながることを意味している。すでに脱原発運動の方々と訴訟を行ったり、福島から避難してきた人たちの裁判支援、あるいは朝鮮学校への補助金停止に対する取り組みなどを行ってきた。今後も、「反貧困」「反差別」「反資本主義」等を軸に「等価性の連鎖」を追求し、より大きな運動としてのネットワークを作っていきたい。
 私が部落解放運動から学んだものは大きい。右で述べたような「ミクロ」と「マクロ」の視点は、まさに解放運動そのものと言っても過言ではない。具体的な差別への闘いや生活改善への取り組みを行う一方で、政府や自治体に対して政策要求・提言を行い、様々な成果を勝ち取ってきた。こうした闘いの経験や運動の歴史を、部落解放同盟にはもっと発信してほしい。それが今を生きる若者の希望にもなるはずだ。部落差別は終わった問題ではない。闘い続けるのが民主主義の宿命である。過去の歴史を後世に伝えていただきたい。

(ふじた・たかのり/NPO法人ほっとプラス代表理事)


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