コラム・水平線

月刊誌『部落解放』の巻頭コラム「水平線」を著者のご了解を得て、転載いたします。

(2020/11/18up)




◆ 子どもの声を聴くことから、はじめよう ◆

〈『部落解放』2020年11月号掲載〉

山崎秀子

 はらっぱ舎AIAIでは、「人が集まるとは楽しいこと」を体現する子どもたちと触れあう毎日です。「おはよう」「タッチ」はもちろん、他の子どもが登園すると飛び跳ねて喜んだり、駆け寄る姿。〇歳児も、先生の顔を見てニコーッと笑ったり、ハイハイで一目散に近寄ってきます。子ども情報研究センターは、五年前に保育所を設立。現在、二園(大阪市認可保育所はらっぱ舎・大阪市小規模保育所はらっぱ舎AIAI)で七四人の子どもたち、四〇名の職員がいます。今年度は、新型コロナウイルス感染拡大防止のなかスタートしました。三原則として、マスク、手洗い、密を避けることが提唱され、問題はマスクと距離を取ること。職員のマスク着用をどうするか悩みました。職員の表情が見えないことの子どもへの影響はいかほどか。感染拡大防止が第一と考え、着用しています。
 ある職員が「通勤電車や街で見かけるおとなは(マスクで表情が見えないのに)怖い。でも、保育所の先生たちはマスク越しでも怖くない」と。確かに、マスク姿でも笑って呼びかけると、子どもたちは笑い返します。怒った時には、シュンとなったり、聞こえないふりをしたり(笑)。全身からにじみ出る何かがあるのでしょうか。子どもたちの姿を見ていると、人に近づき、言葉や視覚だけではないところで、その人を感じ取っているように感じます。絵本をいっしょにのぞき込む他の子どもの存在、集中してお絵描きしている時の空気、人の体に触れた時の匂いや感触、オンラインでは得られないものではないでしょうか。四月入園の子どもたちは、先生の顔をあまり見たことがありません。進級の子どもたちは、先生の顔を十分知っていて、今はマスクがある状態。これは大きな違いでは? など、日々悩みながらの現場です。
 人が集まる場では、苦悩を伴うこともあります。当センターでは、チャイルドライン(子どもがかける電話)や子ども家庭相談室で、学校や家庭のしんどさ、理不尽さを訴える子どもの声を聴いてきました。私たちは、まず、子どもの声をそのまま聴くことを大事にしています。「おとなの良かれ」は横に置きます。ノルウェーやフィンランドなどでは首相が子ども記者会見を開催。「友達の家に行ってもいい?」など、新型コロナに関わる子どもたちの質問に答えています。さて、日本は? 子ども向けに発信はありません。コロナ禍では、子どもにもいっぱい聞きたいことがあるはず。フィジカル(物理的な)ディスタンスを取りながら、ソーシャルな(社会的)つながりを大事に、子どもの声を聴く活動を続けていきたいと思っています。

(やまざき ひでこ/公益社団法人子ども情報研究センター代表理事)


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